
Storyストーリー
失ったからこそ再び見つけられた
生きることの喜び
#ロケーション 大手前アートセンター
2016年に腎細胞がんを発症、2025年に再発を経験。2度も臓器が失われる喪失感を埋めるためか、手術後に色んなことを思い出しました。麻酔から覚めたときに見えた光、聞こえてきた看護師さんや家族の声は、赤ん坊が初めて出会うこの世の光や音のように輝いていました。病室に響く酸素吸入マスクの音に、むかし飼っていた金魚の水槽の音が重なりました。忘れていた出来事を思い出すたびに感情が揺さぶられ、失われたものを埋め合わせてくれたのです。

いのちは、くり返し咲く。何度でも。
病も年齢も超えて、まだまだ続くわたしの青春。
2度目の手術をした2025年、安藤忠雄さんの「青春」の展覧会がありました。
安藤さんは60代と70代で2度がんを患い、膵臓などの「五臓」をすべて摘出されるという大病を経験されたにもかかわらず、いまも「永遠の青春」を生きることを見事に体現されています。私はその姿に大きな勇気と生きるチカラをいただくのです。今回作品を描いた時、安藤さんの「いくつになっても青春」という青りんごのメッセージに私自身の体験が重なりました。

Q. その風景や存在を思い浮かべたとき、どんな感情がよみがえりましたか?
年齢や境遇に関係なく、挑戦をやめたときに人は老いていき、逆に、困難に立ち向かい夢を追い続ける限り、誰もが「青春の真っ只中」にいることができるのです。青春とは、時間の区切りではなく「生きるエネルギー」の象徴だと思います。
がんの再発と同じタイミングで還暦を迎え、今までの人生を振り返り、これからの人生に想いを馳せるようになりました。これからは巡り巡って人生のアンコールを生きる?いや、ここからまた第二章の幕開けであり、安藤忠雄さんのようにいくつになっても「青春」を楽しめたら素敵だなと思いました。

Q. 闘病を経て、「これからの生き方」で大切にしたいと思うことは何ですか?
人は何度でも生まれ変われる。還暦とがん再発の2025年、私も再び赤ちゃんのように初心の気持ちで、今これからを生きてみようと思いました。これまでの様々な「心の集積のような私」と、「新たに再生する私」との邂逅。今年から再生医療に関わる仕事にチャレンジしています。これまでの医療で解決できない命を救うことに貢献できる喜び。そして、私自身もここから続く新たな再生のジャーニーを楽しみます。

Regenerative 〜 再生
太陽のオレンジ、大地の緑、空の青。生まれて初めて見るような、この世界の光。すべてが重なり合って、自らを優しく包んでくれる。一つひとつの生命が身体の細胞の中に溶け込んで、また前に進むチカラとなる。この作品から、柔らかなホールネスと、いのちの再生を感じていただけたら幸いです。








